症例~腰
ギックリ腰?
突然腰が締め付けられるように痛くなって、動けなくなるのが典型的なギックリ腰です。何か重いものを持ち上げようとしたり、椅子から立ち上がる時、靴の紐を結んで起き上がろうとした時、様々な形でギックリ腰があなたを襲います。
多くのギックリ腰の原因は、椎間板ヘルニアだと言われています。背骨の腰の骨(腰椎)と骨の間にあるクッションを椎間板と呼びますが、この椎間板の中央に髄核と呼ばれるゼリー状のものが含まれています(図1:マッケンジー腰椎編 江崎器械出版部より引用)。
その髄核は上半身を前に倒したり、猫背になると後ろに押し出されて、周囲の神経を圧迫したり、中のゼリーが飛び出して炎症が起こったり、周囲の組織に影響を与えるのが椎間板ヘルニアです(図2:同上)。
他人事ではない、あなた、あなたです!
左の写真を見て下さい。背中を丸めて猫背の体勢です。実はこの体勢が図2の椎間板の状態を形成します。背中を丸くすることで、椎間板の前方の幅が狭くなります。
そして腰の部分(腰椎)の椎間板に含まれるゼリー状の髄核が後方に押し出されます。腰を丸める体勢が、椎間板を後方に押し出す結果を招きます。
誰でも立っている時のように、腰を伸ばした状態で長い時間座り続けることは不可能です。
考えてみて下さい。私達を取り巻く環境は、昔のように歩き回ったり、重いものを運ばなくても済むようになり、全てコンピューターのオンラインやネットで仕事を済ませるようになりました。
しかし反対に昔のように身体を動かして、知らない内に身についていた筋力は今の生活では得ることは出来ません。
まずは姿勢を修正してみたら?
しかし、反対に腰痛で苦しむ人は増え続けています。何故でしょう?
統計では重い荷物を持つ仕事をしている人達と、オフィスで仕事をしている人達の腰痛になる頻度は同じであることが判明しています。つまり腰を前方に曲げる比率が高い人達(アナタかも知れません)が、ギックリ腰に成りやすいのです。
修正の第一歩!まずは腰を伸ばして反りましょう(写真右)。
まずは簡単なエクササイズから始めよう!
まずは壁に両手を肩レベルの高さに置いて、最初は両肘を伸ばした状態で壁にもたれます。次に徐々にお臍だけを前に突き出すようにして腰を伸ばします。
出来るだけ前に出すように頑張って下さい。そして元の体勢に戻します。この動き10回を1セットとして、1時間毎に繰り返します。目標が2つあります。
1.腰が大きく反れるようになる!
2.腰部の痛みが背骨に近い中央に集中する!(もし以前よりも痛くても、中央に集中しているのであれば、それは治って行く徴候ですから心配いりません(続けてください)。
今のエクササイズに慣れたら、次に立位で腰のベルトの位置に両手をそえて、肩を後方に移動するのではなく、お臍を突き出すように腰を反らします(下の写真)。
腰が痛くない人は簡単にできるはずです。しかし普段、いつも腰を前に曲げた体勢(猫背)でいる人は、肩が後ろに移動するだけで、腰の部分はうまく反れないはずです。まだ間に合います!
1時間毎に10回を1セットとして、腰を反る運動を普段の生活に取り入れて下さい。
腰痛になったら腰を反ってはいけない!腰を丸めて寝なさい!と提唱したのは、ウイリアム エクササイズという1900年代初期に取り入れられた考え方です。
しかし1960年代からはマッケンジー エクササイズが世界の主流です。マッケンジーは10人に9人は腰部を反るエクササイズが必要だと提唱しています。
日本ではいまだに多くの治療家はウイリアムが提唱した間違いを支持しています。面白いですね。
後方に彎曲している胸部とは反対に、腰部は正常であれば前方への彎曲(前彎)を形成しています。
腰部に彎曲があるのは、2本足で歩く人間だけです。そして立つためには、腰部の彎曲が形成する必要があります。
つまり前彎は立って歩くためには不可欠なのです。前彎を形成するためには、腰を反るエクササイズが適応します。
もし反ると痛い人は次のように考えて下さい。反ることで痛いのではなく、反れないから痛いのです。頑張って反りましょう。
どうしても反れない方は、マッケンジー エクササイズを理解している治療院にご相談下さい。
エクササイズ2
慣れてきたら、壁を使わずに立った体勢で腰を伸ばしてみましょう(この方法であれば、オフィスでもどこでも出来る)。
左右の親指をベルトの後ろに沿えて、腰を伸ばすと同時に親指で前方に向けてグ-ッと押してください。この時に肩を後ろに倒していないか注意します。
肩を倒すのではなく、お腹を前に突き出すように。グ-ッと押してください。元の状態に戻して、これをリズミカルに5~10回繰り返します。
忘れないで、反ると痛いのではなくて、反れないから痛いのです。
少し痛くても慣れてくれば反る角度が徐々に増えるはず!増えてきたらこちらのもの!腰痛から解放される日も近い!
エクササイズ3
うつ伏せで寝れるようになったら、最後のエクササイズ(最初からうつ伏せで寝れる人は、最初から取り入れて)に移ります。
腕立て伏せの要領で、両手を肩幅に広げ、上半身を上げて行きますが、ベルトから下方5cmは決して離れないように注意します。
幾つかの注意点;
1.反りながら顎を上げず、顎は引いた体勢を保つ。
2.下腹部が一緒に上がらないように、もし上がるようであれば、第3者に後ろからベルト辺りを支えてもらい、下腹部が上がらないようにサポートしてもらう。
3・手首を反った(伸展)した状態で行うので、腱鞘炎が起こらないように注意する。もし手首に違和感を感じる場合は,手首にサポーターを装着するか,拳で行うか(ベッドなどの柔らかい表面上で)、またはベンチのような狭い上で両端を掴んで行うなどの工夫が必要です。
4.目標は前述したのと同じ、痛みの中央への集中化と,両肘が伸びきるまで反れること。
これがマッケンジー エクササイズの基本です。治療家の方々は毎回患者さんが正しくエクササイズを行っているか必ず確認してください。
自分に楽な方法に変えてしまう患者さんが多く見られます。ご注意下さい。